本論分の分析の結果得られた知見と、本研究の当初の狙い である共進化モデルとの間には乖離があります。また、 共進化モデル、あるいはOSSコミュニティ内の開発プロセスに 対して提案手法である遅延相関分析が適する理由、先行研究に 対する位置づけなどの議論展開に不十分な部分があります。 それらの点を改善することによって採録に値するものになると 考えます。 具体的には、以下の点を中心に議論構成を再検討してください。
●2.2 OSS システムとコミュニティの共進化
Yeらの共進化のモデルを定量的に分析する手法として、遅延 相関分析が適していると考えられる理由を考察してください。 一般論でかまいませんので、データマイニング領域に不案内な ものにも論理の流れが理解できるように、簡単に遅延相関 分析が適すると考える理由に触れてください。
●3.3.1 説明変数および目的変数の変化量の算出
説明変数の変化量を、説明変数の値の累積値を求めることに よって表現するのは何故か、遅延相関分析に不案内なものにも 提案手法の特徴を把握できるように、説明を加えてください。
●4.1 目的
先行研究[21]の制約をいくつかあげていますが、[21]は、 Yeらの OSSの共進化モデルにもとづいた因果関係の仮説に 基づいてパラメータの選択を行ったのであり、(2)および (3)は、制約というよりは仮説検証型の研究の特徴という べきだと思います。 したがって本論文と先行研究の違いは、本論文が Yeらの モデルのみに留まらず、広くパラメーター間の有意な関係 (遅延相関)を探索的にマイニングし、より広い視野を もって検討した点にある、というべきではないでしょうか。
こういった点を念頭に先行研究に対する本論文の位置 づけを再検討してください。
●4.4 分析手順
「通常の相関分析手法では抽出することのできなかった 関係が,遅延相関分析に基づく提案手法で抽出することが できれば,提案手法の有用性を示すことができる.」
有用性の位置づけ方が単純すぎるように思います。 4.5.1で述べられているように、本研究では実際のところ、 通常の 相関分析で抽出できた 751件に比べて、提案手法 では 171件しか抽出できず、また、提案手法のみで抽出 できた 31件に比べて、通常の相関分析のみで抽出できた ものは 751 - (171-31) = 611件です。したがって、この 有用性の位置づけ方では、通常の相関分析の方が 有用で あることになってしまいます。
論ずべきは、遅延相関分析と通常の相関分析の優劣では なく、遅延相関分析を併用することにより、通常の相関分析 だけよりも、より有用性の高い分析が行えるといったこと ではないでしょうか。ただし、その場合は(2.2節への コメントで触れたように)、Yeらのモデルに対して遅延相関 分析のみが適するのか、通常の相関分析も適するのかどうか も問題になりますので、あわせて検討してください。
この点を念頭に、提案手法の有用性の位置づけを再検討 してください。
●4.5.2 詳細分析の結果
OSSプロジェクトの現状を垣間見せる興味深い説明と思います。 しかしこれは共進化関係とは言えず、むしろOSSプロジェク トのプロジェクトマネジメントを考える上で参考になる知見 ではないでしょうか。
Yeらのモデルを出発点とした先行研究とは異なり、探索的な データマイニングにより、プロジェクトのリアルな状況を 垣間見せる結果が得られていると考えますので、4.1節の 本論文の位置づけとあわせて、目的から結果につながる論理の 流れを再検討してください。