査読者はおそらく3名
テーマ設定もよく、ネットワーク分析で考えるというのもいいと思うが、どうし
て3つのケースを選定したかが問題で、額面通り「3つの著名なOSSコミュニティ
ケーススタディ」ということだと、ケース間のコントロールも効かず、研究と
して何をやっているのか分からなくなってしまうので、同じような種類のソフト
ウエアを開発しているグループで育ったところと育たなかったグループとの比較
など、研究としての意図をもった選定をしないと、アドホックな研究と受け取ら
れてしまう。Yin, Robert K., "Case Study Research: Design and Methods, Third Edition.," Sage, 2002.などをご覧になることをお勧めする。
扱っているテーマはおもしろいと思う。ただし、中心概念である「コーディネーター」が、キーワードに含められていない。
内容的には、「開発者」、「ユーザー」、「コーディネーター」という質的に異なる三種のノードからなるネットワークについて、
「中心性」の概念をそのまま適用している点が気になる。
筆者自身もコーディネーターは「媒介中心性」では表現できないと認めている(9ページ)。それならどうしてこの概念を使うのであろうか。
中心性の値の違いによってノードを質的に区別するというなら話はわかるが、ノードの質的区別はそれとは無関係になされているので、
話がわからなくなる。
中心性の推移を開発者とユーザーのそれぞれについて調べているのは、とても興味深いが、
それなら最初からネットワークを三つの部分に分解するところから話を始めるべきではなかろうか。
なお安田雪さんの解説書では、フリーマンが提唱したのは「媒介中心性」だけで、その他の二つの中心性はもっと前からいわれていたように読めるが。
テーマ設定および分析方法の考え方は優れたものが見受けられる。しかし、コーディネータの存在および中心性の論じ方が不十分と思われる。